2010年11月24日
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朝鮮と戦争の問題をうだうだ語る

Written By: 川俣 晶連絡先

「まあ。たまにはスケールの大きい話をしようよ」

「いつも下高井戸の枠を越えて永福町まで行っておる」

「いやいや。国境を越えようよ」

「えー、めんどい」

「北朝鮮と韓国の交戦の煽りでいろいろ影響が出ているようだけど、君はどう見る?」

「さあ」

「さあ、って……」

「郷土史に興味のある人間を捕まえて意味のある答えが期待できる設問とは思えないね」

「じゃあ、北朝鮮についての感想は無いの?」

「無いこともない」

「それは何?」

「戦前の日本と似ている気がする。まあ気がするだけで、実際にどうかは知らないけどね」

「なぜ似ているのだろう?」

「地理的な制約による必然だ」

「というと?」

「極東でいちばんストレスが来る危険な地域は、中国、ロシア、アメリカの三勢力が向かい合う場所だ。だから緩衝地帯が不可避だ。誰も火中の栗は拾いたくないからな」

「どういうこと?」

「戦前の日本というのは、朝鮮半島から南洋の諸島までを版図に含み、まさに中国、ロシア(ソ連)と国境を接し、太平洋の向こうに西進の野望(フロンティアスピリッツ)を持つアメリカと向かい合うやばい立場であったわけだ。結局、長い時間をかけて日清戦争、日露戦争で中国とロシアには勝ったが、最後に太平洋戦争でアメリカにボロ負けしてアメリカの影響下に入った。その結果として、アメリカの最先端は韓国に進出することになり、三国の勢力圏が集中するポイントは北朝鮮に移ったわけだ。しかし、そんな一触即発のやばい地域を直接支配してもいいことは無いので、北朝鮮という国家に任せることに誰も異議を唱えない。しかし、北朝鮮は3大勢力に周囲をぐるっと囲まれてストレスは絶大だ。それゆえに、かなり奇矯な行動に出ることはある意味で必然だ」

「それって、戦前の日本は奇矯だと言っているようなものだよ」

「中国大陸の荒れ地に日本の余った人数を開拓民として送り込むような国だぜ。間違って無いだろ?」

「じゃあ、どういうこと?」

「貧乏くじだよ。日本は、植民地を入手できる甘い誘惑に乗ったつもりで朝鮮を併合したが、実際は貧乏くじを引かされたってことだ。そして、戦後、その貧乏くじを継承したのが北朝鮮ってことだろう」

「それで君の感想は?」

「北朝鮮さん。僕ら日本の代わりに貧乏くじを引き受けてくれてありがとう。君たちの犠牲のおかげで僕らは繁栄するよ」

「それが結論か」

「でもさ。ここで日本がアメリカの可愛い飼い犬であることをやめて自立してしまうと、その貧乏くじはまた日本が引くことになるんだぜ」

「なぜ?」

「アメリカからのストレスは日本が引き受けることになる上、飼い主のアメリカの存在感が無くなれば中国やロシアもストレスを掛けてくるからだ。というか、飼い主との関係が上手く行っていないと気付くと、どんどんストレス掛けてきてるだろ?」

問題は §

「結局、戦争はやるだけ無駄」

「なぜそう言い切れるの?」

「郷土史をやっていると、具体的にどこに敵機が落ちたとか誰が死んだとか1機単位、1人単位で話が見えてしまうんだよ。戦争に犠牲は付きものだという屁理屈で割り切れる世界ではない」

「勝つならいいのでは?」

「徴兵で誰が取られたとか、そういう悪い話が溢れることに変わりはないよ。特に、昔と違って今は少子化で人が余ってない。長男は金を払って出征を免除してもらってその他の子供を軍隊に送る……という方法論を採ると一人っ子の家は誰も出さないことになる」

「それでも戦争をするには、長男まで強引に徴兵するしかないね」

「でも、それはたいていの家では受け入れられない話だろう」

「確かに」

「なら誰が戦争をする?」

「さあ」

「というわけで、不毛な話はオシマイ」

「うだうだ語っただけになったね」

「そんなものさ」

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